景観色彩ファイル035/景観と車両デザイン
公共交通機関は移動体ですが、景観の一要素と考えています。
専門職として、景観の調査に年間を通じ色々な街をめぐりますが、バスやタクシー、電車と、景観を損ねるものも少なくありません。
例えば、九州ではJRの路線バスは消防車のような赤、もちろん全体赤一色です。
緊急車両なら妥当な車両全部真っ赤と言うものも、路線バスに全車使用するJR九州関係のデザインを一手に担う水戸岡氏のセンスは全く理解できません。
ただ、これには続きの話があり、韓国航路(水中翼船のような高速艇)に、真っ黒を使用してBEETLEとネーミングしたり、今度はJR国際線の高速艇に血のような赤色を用いたり。
よくコンペやプレゼンで「世界に他にない」「唯一無比の色」と安易に特異な場違いな色を提案する安易な手法もありますが、このバスや高速艇の色は、もう一人の企画立案者の趣味か道楽、もしくは色彩に造詣が深くない方の独善的なカラーデザインとも考えられます。
特に路線バスであれば、赤は路線バスではなく普通に緊急車両に用いるべきでしょうし、黒い船舶(しかも高速艇)は海上でおそらく視認性も悪く、衝突等で海洋の他の動物に危害を与えていた可能性さえ考えられます。
画像は都内の田園都市線の内装。
カラーデザインにはコンセプトが必須。
今回のJR九州の新幹線カモメも、既存の700系の車両を「お化粧をしてあげるんですね、目も鼻も描いてあげて…。(実際の講演会での水戸岡氏の弁/伝聞抜粋)」と、ご本人の弁をしても厚化粧を施しただけの、まさしくノーコンセプト。
また、かもめも「赤」の由来も、もうどうでも良いことになっています。
(水戸岡氏は、豪華旅客車と言われるななつ星以来、イタリアのアルファロメオを模したようなグリルデザインがお気に入りで、車両先頭に不要なマークの再登場です。)
事実、多くのJR九州の旧来の車両に色を塗り、ロゴマークや社名、車両名のローマ字を大きく羅列しての車両デザインは、本来の車両デザインとはかけ離れた、厚化粧の域かもしれません。
それは、日本国内の大型輸送や公共交通機関を担う各社の秀逸なコンセプトのあるカラーデザインを見ると痛感します。
投稿者
長 和洋/イルドクルール